介護職員の皆さん、有給休暇はちゃんと取れていますか?
「有休なんて、取ったら嫌な顔されるから取れないよ〜」
「誰も有休を取らないから、取れるわけないよ〜」
そんな声が聞こえてきます。
でもこれ、労働基準法違反です。
有給休暇を合理的な理由もなく拒否すると、労働基準法第39条の違反となり、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金となります(労基法119条)。
介護業界で介護職員としてに20年勤めているわたしハピケアが、搾取されている介護職員の目を覚ますためにこの記事を書いています。
「わたし搾取されているかも……」と感じる介護職の方は、ぜひ最後まで読んでいってください。
有給休暇に関わる違反
早速結論です。以下の行為は全て労働基準法違反です
心当たりのある方は、お勤めの介護施設から搾取されています。このことを知らないまま働き続けることは、本当にもったいないです。
- 時季変更権の乱用
- そもそも取得できない
- 有休使ったら、不利益な扱いを受けた
- 有休取得理由によって却下
私の勤務表作成者としての経験ですが、ここ数年で有給休暇はかなり取得しやすくなったと思います。やっぱり年間5日取得することが義務化されたことが大きいと思います。
それでも勤務表を作っていると、「有休申請多すぎる〜!」「この人は毎月申請があるなあ…」とか、有給休暇の申請に対してネガティブな感情が起きるのも事実です。
だからこそ勤務表作成者は有給休暇の取り扱いに対して、正しく、公平に、ポジティブな姿勢で向き合う必要があります。
2019年4月から、全ての企業において、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者(管理監督者を含む)に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが義務付けられました。
厚生労働省
時季変更権の乱用
会社は申請された有休に対して、時季変更権という権利を持っています。
労働基準法第39条5項
使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
労働基準法|e-Gov法令検索
この「事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。」の箇所を勘違いしている人が多いと思います。
時季変更権が使用できるのはこれに加えて、その日に有給休暇が取れるように施設側が努力することが必要です。その努力をされていないケースがほとんどではないでしょうか?
*その日の業務を省略または別の日に代替する。
*他から職員の応援を依頼する。
これらの配慮を尽くした上で、どうしても業務が回らないのであれば時季変更権が使用できるという、
かなりハードルの高い権利なんです。
その日は人手不足だから無理
常に人手不足な介護業界。人手不足を理由に、申請した日の有給休暇が取れないことがあると思います。
しかし、先ほども説明した通り、時季変更権はかなりハードルが高いです。
「人手不足で他からの応援もできない、業務を省略しても難しい。だから時季変更権を……」という理由。
一見条件をクリアしているようにも見えますが、常に人手不足な職場だと時季変更権行使はできません。
なぜなら、この先もずっと人手不足が想定され、誰もが有給休暇が希望通り取得できないからです。
一時的な人手不足であれば時季変更権行使はできますが、日常的な人手不足であればそもそも時季変更権は使えないので、お勤めの介護施設で時季変更権を人手不足を理由に乱用されている場合、労働基準法第39条5項に違反しています。
とはいえ、「そんなこと言われても、職員がいないから物理的に有給休暇なんて取れないよ〜。」
という声があると思います。
でも、その人手不足は一体何が原因なのでしょうか?
私が20年働いてきて、10年介護主任をしている経験から思うのですが、人手不足は経営者の手腕の無さが生んでいます。
そもそも人手不足で無理のある経営をしている状態なので、悪循環を防ぐためにも事業規模を縮小すべきです。
それなのに「収入が減るから」という理由で、現場の介護職員に無理をさせる。
収入が減って困るのは経営者だけです。現場の介護職員には関係ありません。ボーナスが出ないという影響は受けるかもしれませんが、収入が減って人件費も減っているので何も変わりはありません。
事業規模縮小を理由にボーナスを出さないような『介護職員から搾取する職場』からは退職して、ちゃんと経営している介護施設へ転職した方が確実です。
単純に経営者の手腕が足りないだけです。
その手腕の無さの尻拭いを、人手不足な環境で無理して働かされる介護職員がするべきではないです。
全ては経営者の責任。経営者が経営判断すべきです。
自己犠牲をしている介護職員の皆さん!本当に目を覚ませしてくださいね!
そもそも取得できない
そもそも有給休暇が取れない介護施設は論外です。
「働き方改革は介護業界に関係ない。」とか、訳のわからない理論で言いくるめられていませんか?
「昔は有休なんて取れなかった。」
「有休なんて贅沢だ。」
「有休を取らずに働くことが社会人としての常識だ。」
「有給が取れるのは、仕事が一人前にできるようになってからだ!」
などなど……こんな古い考え方の施設で働き続けていても、何もいいことは起こりません。
有給休暇だけでなく、さまざまな面で介護職員から搾取しようとする姿勢のある施設なので、ぜひ転職を考えた方が良いです。
職場の風土で「有給休暇が取れるような雰囲気じゃない」ということもあると思います。
「職場の人はいい人ばっかりだから、自分か有休を取ったら迷惑かけてしまう……」という職場もあると思います。働いている介護職員は悪くありません。このような優しい介護職員の良心につけ込んで、有給が取れない職場風土を放置している経営者が悪いんです。
そんな無責任な経営者がぬくぬくとしている状態……
その経営者の下で身を削って働いている介護職員さん、本当に目を覚ましてほしいです。
有休使ったら、不利益な扱いを受けた
「有給休暇を取ろうとしたり、取得したら評価を下げられた。」
「有休を取得した人には、皆勤手当を支給しない。」
これ、労働基準法違反です。
有給休暇の取得は労働者の権利なので、それが原因で評価を下げたり、有休を取得することで不利益があってはいけません。
第百三十六条 使用者は、第三十九条第一項から第四項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。
ですが、「不利益な取り扱い」というのもざっくりした内容です。
例えば
「有給休暇を取ったことで、職場の人からいじめられるようになった。」
「無視されるようになった。」
「また有休取るの?信じられない。と悪者扱いされるようになった。」
などは、金銭的な不利益ではないので、パワハラに関することなので、パワハラ防止法に違反します。ちなみにパワハラ防止法の正式名称は「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(略称:労働施策総合推進法)です。
法律違反だということですが、違反しても罰金や懲役はありません。社名とパワハラの内容を公表されるだけなので弱いですが、人手不足の介護事業所にとっては職員の採用に繋がらなくなる痛手となります。
有休取得理由によって却下
有給休暇を取得する理由を、「家でゲームしたいから」にしたら有休却下された。
これは完全にアウトです。
有給休暇を取得する理由は、どのような理由でも構いません。そもそも理由を伝える義務はありません。
そのため、理由を書く欄があれば「私用のため」と書けば良いです。
そもそも有給休暇取得を却下することは、先ほど説明した「時季変更権の行使」以外では認められません。
上司のダメ言動として
*「そんな理由で有休は取ることはできないからな!」
*「有休取りたい理由は?」
*「有休申請って……みんな我慢してるのに、君は取るんだね。」
このような残念な上司は、結構いると思います。
その都度、労働基準法第39条の違反となり、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金になることを伝えましょう。
介護職員の有休取得率
20年間この業界で介護職員で働いてきましたが、このような「え?」と聞き直したくなるような場面が何回もありました。
その反面介護職員の平均有休取得率を見てみましょう。
介護士の平均年間休日数は、111.5日です。全国平均は113.7日なので、大きな差はなく、休みもしっかりと確保できるでしょう。また、令和3年の資料によると介護士の有給取得率は、58.0%、全国の有給取得率は、56.6%と平均をやや上回っています。
令和3年就労条件総合調査の概況・レバウェル介護
思ったよりも取得率が高いです。
ちなみみ私の弱小Twitterアカウントでアンケートをとった結果がこちらです。
3人しか投票がありませんが、有給休暇はなかなか取れないという結果でした……
ただでさえ介護の仕事は大変なのに、その上勤務先から搾取までされる……
有休に関する知識をアップデートして、介護職員が「知らなかった……」というだけで搾取されない、強い介護職員さんが増えますように。
そして世の中にホワイトな介護事業所が増えますように。
最後まで記事を読んでいただきありがとうございました。
私のブログでは、介護職員がブラック介護施設から抜け出す勇気と力を与えるブログです。
自分の働いている介護施設の処遇のことで悩んでいる介護職員さんは、ぜひ他の記事も読んでみてください!
★★★
「うちの施設ブラックなんだろうか?」判断するためにもブラック介護施設についての説明はこちら
★★★
退職したいのに引き止められて困っている方はこちら
コメント