介護業界では当たり前の『残業に関するルール』がありますが、意外と労働基準法に違反していることがあります。
職場ではそれが正しいと教えられ、後輩にも同じように指導している。
あなたの働いている介護施設は、そんなことがありませんか?
そもそも職場の残業ルールが当たり前すぎて、違反していることすらわからないですか?
もしかしたらあなたの職場、労働基準法に違反していることが多々あるかもしれませんよ?
部下を持つ経営者や上司はもちろん、従業員側も騙されて搾取されないように、『残業に関する労働基準法』と、『未払いの残業代請求の仕方』をこのブログで解説しています。
「知らなかった」では済ませれない、介護業界で「あるある」の労働基準法違反を確認していきましょう
ご利用者を見守りしながらの休憩時間
ご利用者の見守りをしながらの休憩時間は休憩時間ではありません。
休憩時間とは、職場から離れて自由に過ごすことができる時間です。ご利用者の見守りはそれができないので、労働時間です。もしもそのような休憩方法を強要される場合は、残業代が申請できます。
また、ワンオペ夜勤で、「夜はご利用者が寝ているから待機しているでしょ?働いていない時間だから、この時間が休憩時間になるのを知らないの?」という、『宿直者扱い』をまことしやかに言ってきた場合、もちろん大間違いなので気をつけてください。
宿直者とは、勤務時間中ほとんど労働させないことが前提条件です。労働しない夜勤なんて介護職員であるわけないですよね?夜勤中に穏やかな時間がある場合でも、ナースコール対応などの仕事に備えての待機時間となります。休憩時間の定義には全く当てはまらない労働時間となりますので、時間外手当(残業代)を申請しても問題ありません。
【社会福祉施設の場合、宿直者として認められる条件】
通常の勤務時間の拘束から完全に解放されたものであり、夜間に 従事する業務は、一般の宿直業務のほかには、少数の入所児・者に 対して行う夜尿起こし、おむつの取替え、検温等の介助作業であっ て、軽度(※1) かつ 短時間(※2) の作業に限ります。
夜間における児童の生活指導、起床後の着衣指導等通常の労働と同態様の業務は含まれません。※1「軽度」とは、おむつ取替え、夜尿起こしであっても要介護者を抱きかかえ る等身体に負担がかかる場合は含まれません。
※2「短時間」とは、介助作業が一勤務中に1回ないし2回含まれていることを限 度として、1回の所要時間が通常10分程度のものをいいます。
厚生労働省
サービス残業
タイムカードのある介護施設、無い施設があると思いますが、タイムカードが無い施設はサービス残業が横行している可能性があります。
タイムカードがないので、残業するには事前に上司へ報告、承諾を得ることが必要ということをルールにしています。
もしかして心当たりがありませんか?
残業することが事前にわかっていることって、介護現場にはなかなか無いと思います。
委員会の仕事や担当業務、勉強会の準備などのプラスアルファの仕事であればわかりますが、例えばご利用者の急変の対応に追われて休憩が取れないこともあります。そんな時はしっかりと残業代(時間外手当)を申請しましょう。
また、通常業務に追われて残業してしまう場合でも残業代は申請できます。しかし上司からは「あなたの業務スピードが遅いからでしょ?これはあなた自身の問題だから残業とはならないです。」とか言われても、本人の能力に関係なく定時を超える時間に業務を行った場合は残業となります。
施設側は、従業員がダラダラ仕事した挙げ句残業代を支払うことは認めたくないと考えています。しかし、それを防ぐために残業は事前申請にするルール自体は、間違っているので気をつけましょう。
出勤時間
「15分前出勤して申し送りを読んで、情報収集をしたあとに定時ぴったりから業務開始になるように。」というルールの施設もあると思います。
しかし、出勤時間の15分前に早く来れば、その時間から労働時間は開始されています。
最近では、ロッカーで制服に着替える時間も労働時間として認められることもあり、「始業5分前、ギリギリに出勤してくるなんて、社会人としての常識がない!」と嘆いている上司やベテラン介護職員さん。あなたの方が社会人としての常識が無いということを自覚しましょう。
介護主任などの役職者への残業を出さない
役職者だから残業代は出ないというルールのある施設がありますが、これも大きな間違いです。
管理監督者とは、十分な報酬をもらっていて、経営権や人事権を持っており、自由出勤をしているような人のことです。介護現場での業務を行いながら役職業務をこなしている介護職員は、それには全く当てはまりません。
それにもかかわらず「あなたは主任だから手当をもらっているでしょ?だからその分の残業代は出ないよ。就業規則にも書いているからね。」と言われ、実際に残業代が支払われていない場合は、完全な労働基準法違反です。
これに関しても、残業代の未払いがあると思うので、しっかりと請求しましょう。
とはいえ、そんな強気に言えない方には……
未払いの残業代申請方法
休憩時間が実は労働時間だった場合や、残業をしたにも関わらず残業代が従業員に支払われていない場合は残業代を申請しましょう。
しかし労働基準法を知らない上司からは、「そんな残業代申請は認めない!」と言われるでしょう。
そんな時はそれをしっかり録音しておき、その音声データを労働基準監督署へ持っていきましょう。そして未払いの残業代を出すように申し出ましょう。
ちなみに労働基準監督署では、未払いの残業代を従業員へ支払わせた実績を公表しています。
かなりの実績がある上に、弁護士へ依頼するのと違って無料で対応してくれます。そのため残業代の未払いに関しては、まずは労働基準監督署へ相談することから始めましょう。
監督指導による賃金不払残業の是正結果(令和3年度)
厚生労働省は、このたび、労働基準監督署が監督指導を行った結果、令和3年度(令和3年4月から令和4年3月まで)に、不払だった割増賃金が支払われたもののうち、支払額が1企業で合計100万円以上となった事案を取りまとめましたので公表します。
【令和3年度の監督指導による賃金不払残業の是正結果のポイント(詳細別紙1、2)】
厚生労働省
(1) 是正企業数 1,069 企業(前年度比 7企業の増) うち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは、115 企業(同 3企業の増) (2) 対象労働者数 6万 4,968 人(同 427 人の減) (3) 支払われた割増賃金合計額 65 億 781 万円(同 4億 7,833 万円の減) (4) 支払われた割増賃金の平均額は、1 企業当たり 609 万円、労働者 1 人当たり 10 万円 監督指導による賃金不払残業の是正結果(令和3年度)
未払いの残業代を申請する際に必要なこと
証拠が必要になります。
具体的には以下のものになります。
- タイムカード
- 介護ソフトなどの記録アプリのログイン・ログアウト履歴 など
- 雇用契約書
- 就業規則
- 給与明細
- 勤務表
タイムカードが無い施設もあると思います。この場合は証拠不十分にて泣き寝入りする可能性が高いです。
そんな施設では介護職員を搾取しようという意識があると判断して、就職しない方が賢明だと思います。
また、残業代は1時間あたりの給与に1.25倍の給与となります。
22:00~5:00までは深夜労働になるので1.5倍の割増賃金となります。
この計算できちんと残業代が出ているかどうかも確認し、出ていなければ残業代未払いとなります。
介護職員のやさしさを搾取するブラック介護施設
介護職員にはやさしい性格の人が多く働いており、理不尽なことがあっても強く言えないこともしばしば。
中には強気の性格の人もおり、気にいらないことがあったら直談判する人もいます。
ただ、言ったもの勝ちの世界ではダメです。
優しい職員が安心して働ける職場であるべきです。
そのためには、みんなで勇気を出して、労働基準法を違反している職場に対して「それはおかしいです!」と声を上げる必要があります。
「声をあげても何も変わらないよ」と思われる方もいると思いますが、変わらない施設であれば思い切って転職する。
介護職員の優しさが搾取されない業界になりますように……。
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